【6分力計2018】せん断ひずみでFz抽出成功<ブリッジ構成方法解説>

モーメントが測定できたのですが、超薄型6分力計の開発でのFx,Fy、Fzを測定する良い手段がなくて、試行錯誤を繰り返してきたのですが、スキーの帰りにアイデアが思い浮かびました。ねじりブリッジを変形させてせん断ひずみから荷重を測定する方法です。この貼り方は一般的なひずみゲージ貼り資料には書いてありませんのでオリジナルの貼り方ですので、解説を下記に備忘録しておきます。

これをみれば、いろいろなブリッジを組んで、全く新しいロードセルや多分力計を開発できるはずですので、やりたい方はしっかり読んで保存しておいてください。
※曲げると引っ張りと圧縮の変形がどうなるか、ねじるとせん断力がどうかかるかが図を見てわかるレベルの方が対象です。
これは、材料力学の基礎ですので、学習したい方は、下記リンクをどうぞ構造力学もついでに学習したほうが6分力計で使います。忙しい方は、
力のつりあいhttp://www.archi.hiro.kindai.ac.jp/lecdocument/seiteirikigaku/seitei_2.pdf
静定ラーメンの解き方
http://www.archi.hiro.kindai.ac.jp/lecdocument/seiteirikigaku/seitei_6.pdf
で梁のモーメントがおぼろげに想像がつくようになればOKです。

●ひずみゲージブリッジの構成方法を考案した
ブリッジの式がありますが、この式で値を代入して計算するには
ひずみゲージ1枚ごとに1ゲージ法で測定しないといけませんのでとんでもない手間と時間を弄します。そこで、簡単にすぐにブリッジの構成を決定する方法を考案しました。A&Dのページが一番詳しく解説されてるのですが
①ブリッジ式を単純化します。
https://www.aandd.co.jp/adhome/products/loadcell/introduction/cell_intro02_05.html

この式を眺めていると、分子の引き算だけで分力が相殺されたり4倍出力にされたりすることが判ります。分母は関係ありません。
抵抗値は、4ブリッジの場合R1=R2=R3=R4=120Ω or 350Ωです。ひずみ率と抵抗変化はゲージ率で定義されているので式では抵抗値変化だけ考えればいいです。ここでは、小文字をひずみによる抵抗値変化とします。r1,r2,r3,r4です。ロードセルの設計では
|r1|=|r2|=|r3|=|r4|=rと同じひずみがでるように設計します。
それぞれの値は、ひずみゲージが引っ張りひずみだと抵抗が上がるのでプラス値圧縮ひずみだと抵抗が下がるのでマイナス値になります。分子だけみると(R1*R3)-(R2*R4)に抵抗変化値を加えて分解します。
(R1+r1)*(R3+r3)ー(R2+r2)*(R4+r4)
=(R1*R3+r1*r3+R1*r3+R3*r1)-(R2*R4+r2*r4+R2*r4+R4*r2)
ここでR1=R2=R3=R4=R r1*r3 r2*r4は、10e-12と小さいので無視できますので、
=R*{(r1+r3)-(r2+r4)}となります。
要するに(r1+r3)と(r2+r4)の引き算の結果がゼロになるか4つ足されるかどちらかの答えで4ゲージブリッジ回路の出力が決まるということです。

②単純化した式から実際のブリッジの図解
r1、r2、r3、r4の位置は固定します。
ロードセルの構成でr1、r2、r3,r4をどこに貼ればどのようなブリッジ出力が得られるかの考え方の図解です。
ブリッジ出力の組み合わせは、タイプA,B,Cの3種類の±しかでません。
タイプA:(r1>0,r3>0)-(r2<0,r4<0)=4rと4倍出力になります。
タイプB:(r1<0,r3>0)-(r2<0,r4>0)=相殺されてゼロ出力です。
タイプC:(r1>0,R3>0)-(r2>0,r4>0)-相殺されてゼロ出力です。

これをしっかり頭にいれて実際のブリッジ例に当てはめてみます。
③ブリッジ例にあてはめ練習
曲げとねじりのブリッジ例で考え方を説明してあります。
ひずみゲージメーカーが教えているブリッジ結線方法で構成した場合で、上記単純式で考えて分力が得られることがわかります。

※曲げとねじりのブリッジの基本は、共和電業リストにあります。
http://www.kyowa-ei.com/jpn/download/technical/strain_gages/pdf_wiring_001.pdf

④Fz方向の力のみを抽出したい
超薄型6分力計を作るためには、せん断ひずみを利用するほうが薄くコンパクトな起歪部が利用できるので、ねじり用のゲージ構成でFz力を測定したいので、試行錯誤しました。通常は、対辺を交差させるのを平行にした左右も平行にするという変形構成ですが、つじつまが合っていることが単純式から確認できました。

●実際に貼ってデータを測定しました。
位置だしは、マスキングテープで線を引いてからカッターできずをつけてけがき線をいれてからひずみゲージを貼りました。

まずは、真ん中に91gの電池を載せました。

次に、モーメントが発生するようにアーム上同じ電池を載せます

これでCPLTのグラフを見ると


左が真上、右2つがモーメントをかけて電池を載せた場合です。Fzのみを抽出してできているので、モーメントを相殺して同じFz出力がでているのが判りました。

●以後
せん断ひずみでFx,Fy,Fzを抽出する方法を考案したので、超薄型6分力計が実現できそうです。つまり、CrossBeamだけで、MxMyMzFzの4分力が抽出できてしまいますので、あとは
せん断を利用してFxFyをCrossBeamの下に作れば6分力計ができてしまうということです。
厚さ10ミリから15ミリで収まると思います。
専門メーカー品でもなかなか実現できないサイズの6分力計がつくれそうなのでMFT2018の良いネタになると思います。

※2018年11月記 本記事でのせん断でFzを測定する方式はクロストークが多くNGとなりました。

その後8月まで試行錯誤しながら結局、Roverbal式を2個対向させる方式で6分力計をMFT2018に出展しました。最終作品は、下記記事をご覧ください

 

【MFT2018】3Dプリント6軸力覚センサ<備忘録 PDF>

ブリッジの基礎もまとめました、3DP作る場合は、材料力学の理論通りにひずみがでませんので
どうしても変則的なオリジナルブリッジを組まないと分力測定できませんので、基礎学習が必要です。

【PMD2018】基礎学習3回目<ひずみゲージブリッジ組み方>

 

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